2009年11月15日 15:42
現代日本の作曲家と出会う
第4回 高橋悠治の音楽
「風の中のロウソクのように不安定に」
@トーキョーワンダーサイト渋谷に行ってきた。
あるいは、と高橋悠治は言う。
風の中のロウソクのように不安定に、という言葉は言い換えれば、細い塀の上をフラフラ歩く、でも良いのだ、と。いつかは右か左か、どちらかに落ちるかもわからないし、それでも良いのだ、と。
♪
「わたしは特に今回のような若い方と何かをするということがほとんどなかった」、と高橋は言い、こう続ける。「というより私が何かをしても、若い人は来ない」。
それはある意味日本での現象、と前置きしつつ、高橋は自身の歴史観に照らして、この状況を説明する。
1930年、大恐慌と資本主義経済の危機、そして国家の介入。1968年の世界的な学生運動の波が国家により粉砕され飲み込まれる、そしてヴェトナムではアメリカが泥沼に飲み込まれる。1989年、ベルリンの壁が崩壊、そのときには国家は既に、非常に巧妙なやり口で、権力を浸透させるシステムを運用していた。権力は多様化を取り込むようにして、管理を容易にする。
個は個として連続性を持たず、歴史は無力化する。多様化はそんな中で立ち上がる様子もあるが、音楽は依然として立ち遅れている。
♪
濃密な言葉に満ちた2時間半のなかで高橋が伝えたかったことは、「ひとりよがりになるな」ということかもしれない。
高橋は同じ詩に同じ編成で作曲した桑原ゆうのことはまったく意に介していないようにも思えたが、非常に多様式の今回のプログラムに一貫しているのは、富山妙子の木版のスライド、絵本や藤井貞和の詩、そしてバッハのパルティータに素材を求めた作品を並べているということ。
安直な意味での「共同作業」を拒否し(それはもしかしたら当初のTWSの企画自身にも向けられているかもしれない)、しかし現代の風潮や若い世代の芸術家(本当の意味での)に、彼なりのアンチテーゼを、強烈にしかし静かに与えているようにも見えた。
♪
1曲目「光州1980年5月 倒れた者への祈祷」(演奏:大須賀かおり、スライド操作:高橋悠治)。
これは富山妙子の木版と高橋雄二の音楽による「ゲルニカ」である。高橋悠治の音楽は理知的に過ぎるという向きには、ぜひこの作品に触れていただきたい。僕は聴きながら涙を抑えることができなかった。理由は知らない。圧倒的な何かに突き動かされるような稀有な体験だった。
(追記予定)
[image/air_ : 細越一平]
第4回 高橋悠治の音楽
「風の中のロウソクのように不安定に」
@トーキョーワンダーサイト渋谷に行ってきた。
あるいは、と高橋悠治は言う。
風の中のロウソクのように不安定に、という言葉は言い換えれば、細い塀の上をフラフラ歩く、でも良いのだ、と。いつかは右か左か、どちらかに落ちるかもわからないし、それでも良いのだ、と。
♪
「わたしは特に今回のような若い方と何かをするということがほとんどなかった」、と高橋は言い、こう続ける。「というより私が何かをしても、若い人は来ない」。
それはある意味日本での現象、と前置きしつつ、高橋は自身の歴史観に照らして、この状況を説明する。
1930年、大恐慌と資本主義経済の危機、そして国家の介入。1968年の世界的な学生運動の波が国家により粉砕され飲み込まれる、そしてヴェトナムではアメリカが泥沼に飲み込まれる。1989年、ベルリンの壁が崩壊、そのときには国家は既に、非常に巧妙なやり口で、権力を浸透させるシステムを運用していた。権力は多様化を取り込むようにして、管理を容易にする。
個は個として連続性を持たず、歴史は無力化する。多様化はそんな中で立ち上がる様子もあるが、音楽は依然として立ち遅れている。
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濃密な言葉に満ちた2時間半のなかで高橋が伝えたかったことは、「ひとりよがりになるな」ということかもしれない。
高橋は同じ詩に同じ編成で作曲した桑原ゆうのことはまったく意に介していないようにも思えたが、非常に多様式の今回のプログラムに一貫しているのは、富山妙子の木版のスライド、絵本や藤井貞和の詩、そしてバッハのパルティータに素材を求めた作品を並べているということ。
安直な意味での「共同作業」を拒否し(それはもしかしたら当初のTWSの企画自身にも向けられているかもしれない)、しかし現代の風潮や若い世代の芸術家(本当の意味での)に、彼なりのアンチテーゼを、強烈にしかし静かに与えているようにも見えた。
♪
1曲目「光州1980年5月 倒れた者への祈祷」(演奏:大須賀かおり、スライド操作:高橋悠治)。
これは富山妙子の木版と高橋雄二の音楽による「ゲルニカ」である。高橋悠治の音楽は理知的に過ぎるという向きには、ぜひこの作品に触れていただきたい。僕は聴きながら涙を抑えることができなかった。理由は知らない。圧倒的な何かに突き動かされるような稀有な体験だった。
(追記予定)
[image/air_ : 細越一平]




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